mitsulab — 自然循環OS を通じて One Health の実現に貢献する研究所。

01 / About

mitsulab について

What is mitsulab?

mitsulab は、自然循環OS を通じて、One Health の実現に貢献する研究所です。

土・水・植物の自然循環は、本来ひとつのまとまりです。しかし近代以降、私たちはこれを農業・土木・林業・水文・生態・公衆衛生といった専門分野に切り分けて扱ってきました。それぞれが深まる一方で、自然循環そのものを統合的に観る視点を失い、斜面崩壊・樹勢衰退・水脈断絶・生態系の劣化などを引き起こしました。個別の症状に見えるこれらの現象は、根を辿れば「自然循環の機能不全」に行き着きます。

mitsulab は、この機能不全に向き合うため、「自然循環OS(Nature Cycle OS)」の構築に取り組んでいます。観測(Observe)・感覚(Immerse)・再生(Regenerate)・編集(Edit)の四つの実行レイヤーが有機的につながり、自然循環をひとつに結び直す仕組みです。これは同時に、人・動物・植物・環境の健康が不可分であるとする国際枠組み "One Health"(WHO・FAO・WOAH・UNEP 四機関合意)の「環境」次元を、現場から実装する方法論でもあります。土壌・水循環・生物多様性の機能不全を診断・回復することで、人・動物・植物の健康に資する仕組みを設計します。

自然循環OS の四つの実行レイヤーについて、観測は IoT・GIS・3DGS・音響観測で土地を多層的に捉え、感覚は書道を起点とするメディアアートで数値の届かない層に開き、再生は高田宏臣・矢野智徳ら第一線の実践者の現場で土と水と植物の循環を取り戻し、編集は 4 言語デジタルメディア Stillpoint で古今東西の自然循環に関する知恵を比較文化人類学的な視点から編みます。四つの実行レイヤーが連鎖することで、自然循環をひとつに結び直していきます。

自然循環OS が向かうのは、人間が自然を「制御する」未来ではありません。観測で自然の動きを聴き、再生で循環を取り戻し、感覚で人間と自然の関係そのものを修復し、編集で人類が築いてきた自然循環の知恵を紐解く——その全てを支える機械を、自然と人間の間に立つ媒介として位置づけます。人間が自然を制御するのでも、機械が人間に取って代わるのでもない。人間・自然・機械が互いの感覚を交換しながら、自然循環を共に支える。その器として、自然循環OS を社会と共に育てていきます。

Methodology Platform / 方法論プラットフォーム

自然循環OSNature Cycle OS

自然循環OS は、観測・感覚・再生・編集という四つの実行レイヤーからなります。四つはそれぞれ独立した工程ではなく、相互に深く関連し合っています。どれかひとつだけでは自然循環の全体像は見えにくく、四つが補完し合うことではじめて、ほどけた自然循環をひとつに捉え直すことができます。

↓ 4 つの実行レイヤー(四本柱)の具体的なプロジェクト:

Pillar Ⅰ

Ⅰ:観測Observe

IoT・GIS・3DGS・音響観測——現代の観測技術によって、人の五感では捉えられない自然循環の動きを翻訳します。土中の通気、微生物の活動、地表の変化、流域の水脈。見えない「傷」と「回復」をデータとして捉え直すこと。すべてはここから始まります。

  • Project · 進行中 / Ongoing Field X Insta360 X4 + 3DGS による空間記録。施工前後の根圏・樹冠・地形変化を 3D で比較する観測体系。
  • Project · 進行中 / Ongoing Soil Sound Project ピエゾマイクで土中の活動音(CO₂気泡・ミミズ・菌糸 等)を収録し、聴覚で土の状態を観測する新しい指標。
  • Project · 構想 / Planned 流域 GIS マッピング 流域単位で土壌・植生・水脈データを統合可視化。自治体のネイチャーポジティブ施策と住民理解の橋渡し。
  • Project · 構想 / Planned eDNA × 土壌微生物観測 水・土サンプルから生物相全体を非破壊で把握。SOFIX 等の指標と組み合わせ、土壌の健全度を多角的に観測する。
Pillar Ⅱ

Ⅱ:感覚Immerse

観測データと再生現場の手応えを、音・触覚・空間に変換し、社会に開きます。書道を起点とするメディアアート(Qualia Mind)と土中音のインスタレーション(Qualia Field)が、数値では届かない感覚知覚(Qualia)の層に訴えかけ、自然と人間の関係を問い直します。

  • Project · 継続制作 / Continuing Qualia Mind 書道(雅号「菱碧」)を起点とする身体性・自然との共鳴をテーマにしたメディアアート作品群(60作品超)。
  • Project · 進行中 / Ongoing Qualia Field 土中音をハイドロフォンで収録し、音・触覚・空間へと翻訳する没入インスタレーション。芸術祭出展を視野に展開する。
  • Project · 継続制作 / Continuing Modarity X 温度・湿度・光度・音の環境センサ入力を、触覚や音響へ変換するIoT作品。場の質感を別の感覚モードで体感する装置。
  • Project · 継続制作 / Continuing Qualia/sound ・ heart シリーズ 音と書、心拍と書のクオリアを媒介する書道メディアアート作品集。Qualia/sound Ⅰ・Ⅱ/Qualia/heart Ⅰ。
Pillar Ⅲ

Ⅲ:再生Regenerate

高田宏臣 氏(NPO法人地球守)、矢野智徳 氏(大地の再生)——日本を代表する実践者のプロジェクトに参画し、現場で手を動かしながら学びます。土壌再生・樹勢回復・水系循環回復を、土・水・植物を一続きに扱う統合パッケージとして組み立てます。

  • Project · 参画中 / Active 氷川参道(高田氏) 高田宏臣 氏主催の土壌改善プロジェクトに参画。しがら・点穴・素掘り溝で鎮守の森の地下を回復。
  • Project · 参画中 / Active 上野原(矢野氏) 矢野智徳 氏主催の大地の再生プロジェクトに参画。水脈溝・点穴・風の草刈りで土地の流れを取り戻す。
  • Project · 構想 / Planned 樹勢回復 樹木医との連携を進め、根圏改善を起点とした樹勢回復プロトコルを確立する。
  • Project · 構想 / Planned 水系循環回復 水系再生実践者と連携し、流域スケールで水循環を観測し・再生する仕組みを組み立てる。
Pillar Ⅳ

Ⅳ:編集Edit

編集工学の考えに基づき、古今東西の自然循環の実践と知恵を横断的にまとめます。観測・感覚・再生が「いま・ここ」を扱うのに対し、編集は「古今東西」の事例を編み、四本柱を相互に厚くします。その実践媒体が、4 言語デジタルメディア Stillpoint です。

  • Project · 進行中 / Ongoing Stillpoint(4 言語編集媒体) 月 2 号・約 8,000 字・日/英/中/西。季節・暮らし・水・土の循環を、古今東西の文化から比較編集する長文媒体。媒体名は T.S. エリオット「Burnt Norton」の "still point"(回転する世界の静止点)に由来する。
  • Project · 構想 / Planned 古今東西 自然循環アーカイブ 日本の二十四節気・古典、東アジアの暦、欧州の修道院庭園、先住民の伝統知——観測・感覚・再生と相互参照できる事例データベース。
  • Project · 構想 / Planned 研究者・実践者との対話 比較文化人類学・環境人文学・伝統知の研究者、各地の現場実践者との対話を、4 言語で社会へひらく。

これら四本柱は独立した工程ではなく、観測 → 感覚 → 再生 → 編集 → 観測 の往復として一続きに動きます。観測が感覚の精度を上げ、感覚が再生の動機を呼び、再生の手応えが古今東西の編集へ還り、その編集がまた次の観測を照らす——この循環構造そのものが、mitsulab の研究所としての形です。

自然循環OS が目指す先 — One Health の実現

mitsulab は、自然循環OS を通じて One Health の実現に貢献する研究所です。

人と動物と環境の健康は、本来ひとつの大きな循環の上にあります。雨は土に染み、土は植物を育て、植物は動物を養い、動物は人と土地を支える。土壌・水循環・生物多様性のどこかが劣化すれば、その綻びはやがて動物と人の健康へと波及していく——この認識は「One Health(ワンヘルス)」という言葉で、世界保健機関(WHO)・国連食糧農業機関(FAO)・世界動物保健機関(WOAH)・国連環境計画(UNEP)の四機関により、国際的な枠組みとして公式化されています。コロナ禍は、この不可分性を世界中に強く印象づけました。

03 / Profile

代表プロフィール

About the Founder
上原 光瑛
Uehara Mitsuaki

mitsulab 代表 / Stillpoint 編集長。

埼玉大学工学部建設工学科を卒業後、埼玉県庁の土木技術職として 8 年間、山間部の道路・斜面・橋梁・公園施設の設計・施工監理・維持管理・災害復旧に従事。令和元年東日本台風では、県内最大規模となった地すべり復旧工事(約 7ha、地すべり土量 約 98 万 m³)の主担当として現場を指揮し、令和 6 年度 全建賞(災害枠・都市部門)を受賞。

災害復旧工事への従事、樹木医や水系再生の実践者との対話の中で、「土・水・植物は一続きの自然循環として動いている」という確信に至る。同時に、人の健康と自然の健康は切り離せず、両方を支える鍵——One Health(人・動物・環境の健康の不可分)の「環境」次元——のポイントが、まさにこの自然循環にあるという確信を、県庁時代を通じて深めた。

2026 年 3 月、その確信を起点に mitsulab を開業。「自然循環OS を通じて One Health の実現に貢献する」というビジョンのもと、観測・感覚・再生・編集の四本柱から成る、自然循環の再生のための方法論プラットフォーム「自然循環OS(Nature Cycle OS)」を実装している。

四本柱では、それぞれ具体的に次のことに取り組んでいる。観測(Observe)では、IoT・GIS・3D Gaussian Splatting・AI・VR/MR を組み合わせ、土地の状態を多層的に可視化する技術スタックを構築(VR プロフェッショナルアカデミー 5 期生)。感覚(Immerse)では、書道(日本書作家協会認定の雅号「菱碧(りょうへき)」)を起点に、Qualia Mind 60 作品超、Modarity X、Soil Sound Project などの知覚拡張作品を継続制作。再生(Regenerate)では、高田宏臣氏(NPO 法人地球守)の氷川参道 土壌改善プロジェクトと、矢野智徳氏(大地の再生)の上野原 大地の再生プロジェクトに参画し、現場で手を動かしながら再生実践知を学んでいる。編集(Edit)では、4 言語デジタルメディア Stillpoint の編集長として、リジェネラティブ思想・東洋哲学・自然との共生を比較文化人類学的に編み、世界へ発信している。

自然循環OS が向かうのは、人間が自然を「制御する」未来ではない。観測で自然の動きを聴き、再生で循環を取り戻し、感覚翻訳で人間と自然の関係そのものを修復する——その全てを支える機械を、自然と人間の間に立つ媒介として位置づける。人間が自然を制御するのでも、機械が人間に取って代わるのでもない。人間・自然・機械が互いの感覚を交換しながら、自然循環を共に支える。その器として、自然循環OS を社会と共に育てていく。

年表

1995.4
埼玉県で生まれる
2018.3
埼玉大学工学部建設工学科卒業
2018.4
埼玉県庁入庁(土木技術職)
2021.4–2025.3
令和元年東日本台風 地すべり復旧工事 主担当(規模 約7ha・地すべり土量 約98万m³/LiDAR点群データ活用/令和6年度 全建賞 災害枠・都市部門 受賞)
2026.1–
有機農業研修(すどう農場・日本農業実践学園)
2026.3
mitsulab 開業(埼玉県さいたま市大宮区)
2026.4–
氷川参道 土壌改善プロジェクト参画(高田宏臣・NPO法人地球守)/上野原 大地の再生プロジェクト参画(矢野智徳・大地の再生)
2026.4–
自然循環OS 第 4 の柱「編集」 — 4 言語デジタルメディア Stillpoint 運営開始(日・英・西・中)

専門領域

Four pillars of integrated practice

土木現場 8 年で培った身体感覚と、再生技術・テクノロジー・アートを横断する統合的視点。観測・感覚・再生・編集の四層を、ひとつの実践として接続する。

現場経験

土木技術 8 年

埼玉県庁土木職として 2018〜2026 年、河川・道路・砂防の設計監督に従事。令和元年東日本台風で発生した大規模地すべりの復旧工事を主担当として完遂。被災地形の踏査、LiDAR 点群による地形変化解析、対策工選定、地元調整までを一貫して担当。

  • 地すべり復旧
  • 砂防・河川
  • LiDAR 点群解析
  • 用地・地元調整
再生技術

大地の再生・有機土木

NPO 法人地球守(高田宏臣代表)および矢野智徳氏の大地の再生講座に参画。点穴・水脈整備・通気浸透水脈など、土中環境の通気と水流を回復する手法を現場で学ぶ。土木の構造的視点と、有機農業・有機土木の生態学的視点を接続することを目指す。

  • 点穴・水脈整備
  • 通気浸透
  • 土中環境
  • 有機土木
テクノロジー

観測・空間情報・XR

IoT センサ/GIS/3D Gaussian Splatting/AI/VR/MR を組み合わせ、土地の状態を多層的に観測・可視化する技術スタックを構築中。VR プロフェッショナルアカデミー 5 期生として XR 制作の体系を習得。

  • IoT / 環境センサ
  • GIS / QGIS
  • 3DGS
  • AI / LLM
  • VR / MR
アート

書道メディアアート

幼少より書道に親しみ、日本書作家協会より雅号「菱碧(りょうへき)」を認定。Qualia Mind シリーズ 60+ 作品を制作。書の身体性と東洋哲学を起点に、土・音・触覚を介した感覚翻訳の作品群へと展開。

  • 書道(雅号 菱碧)
  • Qualia Mind
  • Modarity X
  • Soil Sound Project
03 · 02 / Journey

mitsulab までの経緯

The Journey to mitsulab

土木の現場から自然循環OS へ。代表・上原光瑛が、繰り返し崩れる斜面の前で得た問いを起点に、土・水・植物を一続きの自然循環として捉え直し、2026 年 3 月に mitsulab を開業するまでの経緯です。

経歴のナラティブ

埼玉大学工学部建設工学科卒業後、埼玉県庁の土木技術職として 8 年間、山間部の道路・斜面・公園施設の維持管理に携わる。令和元年東日本台風では、県内最大規模となった地すべり復旧工事(約 7ha、地すべり土量 約 98 万 m³)の主担当として現場を指揮し、令和 6 年度 全建賞(災害枠・都市部門)を受賞。

繰り返し崩れる斜面に共通するのは、団粒構造が失われた土と、表面を一気に流れる雨水だった。コンクリートや鋼材で補強するたびに一時の安定は得られるが、数年後には別の場所がまた動き始める——「これは地盤の強さではなく、土壌そのものの問題ではないか」という問いが生まれた。同じ頃、公園管理の現場で樹木医から「樹勢を根本から上げるには、地上部の手入れだけでは足りず、土壌改良が必要だ」という知見を得る。水系の循環回復に取り組む実践者の試みも知り、土・水・植物は一続きの自然循環として動いていることに気づく。

その問いを起点に、有機農業・有機土木・森林土木・土壌学へと学びを広げる。高田宏臣『土中環境』、矢野智徳「大地の再生」、樹木医による根圏改善、江戸期の農書・土木書、アルバート・ハワードのインドール法——これらを通じて、すでに自然循環を取り戻そうと動いている実践者がいることを知り、自身の現場経験と分野横断の視点が、その流れと一致することを確信する。

同じ時期に、もうひとつの重要な気づきがあった。コロナ禍である。野生動物に由来するウイルスが、家畜を経て人へ渡り、国境を越え、暮らしと社会を一瞬で覆す——「人・動物・環境の健康は不可分である」という認識が、One Health(ワンヘルス)として WHO・FAO・WOAH・UNEP の四機関で公式化されていたことを、ここで実感をともなって学び直した。現場で扱われている個別の問題は、より広い枠組み——One Health における「環境」次元の機能不全、すなわち ほどけた自然循環——として位置づけ直せる。その実装方法論を 自然循環OS(Nature Cycle OS)として構築するに至った。

8 年の現場経験と、土木・農業・造園・林業を横断する分野統合の視点を礎に、2026 年 3 月、ほどけた自然循環をひとつに結び直すための研究所として mitsulab を開業した。その実装方法論である自然循環OS は、観測(Ⅰ)・感覚(Ⅱ)・再生(Ⅲ)・編集(Ⅳ)の四本柱から成る。一つひとつの柱を、在職中から並行して積み重ねてきた実践が支えている。

観測(Ⅰ)では、IoT・GIS・3D Gaussian Splatting・AI・VR/MR を組み合わせ、土地の状態を多層的に可視化する技術スタックを構築。VR プロフェッショナルアカデミー 5 期生として XR 制作の体系を習得した。感覚(Ⅱ)では、幼少より親しんだ書道を起点に——日本書作家協会認定の雅号「菱碧(りょうへき)」を持つ——Qualia Mind 60 作品超、Modarity X、Soil Sound Project など、数値では届かない自然循環を人間の感覚へ翻訳する知覚拡張作品を継続制作している。

再生(Ⅲ)では、2026 年 4 月より 氷川参道 土壌改善プロジェクト(高田宏臣・NPO 法人地球守)と 上野原 大地の再生プロジェクト(矢野智徳・大地の再生)に参画し、現場で手を動かしながら再生実践知を学んでいる。編集(Ⅳ)では、編集工学の考えに基づき、古今東西の自然循環の実践と知恵を横断的にまとめる媒体として、4 言語デジタルメディア Stillpoint を運営。リジェネラティブ思想・東洋哲学・自然との共生を、比較文化人類学的な視点から編み、国際的に発信している。

年表

1995.4
埼玉県で生まれる
2018.3
埼玉大学工学部建設工学科卒業
2018.4
埼玉県庁入庁(土木技術職)
2021.4–2025.3
令和元年東日本台風 地すべり復旧工事 主担当(規模 約7ha・地すべり土量 約98万m³/LiDAR点群データ活用/令和6年度 全建賞 災害枠・都市部門 受賞)
2026.1–
有機農業研修(すどう農場・日本農業実践学園)
2026.3
mitsulab 開業(埼玉県さいたま市大宮区)
2026.4–
氷川参道 土壌改善プロジェクト参画(高田宏臣・NPO法人地球守)/上野原 大地の再生プロジェクト参画(矢野智徳・大地の再生)
2026.4–
自然循環OS 第 4 の柱「編集」 — 4 言語デジタルメディア Stillpoint 運営開始(日・英・西・中)
04 / Observe

Ⅰ:観測

Observe — Translating the Invisible

人の五感では捉えられない自然循環の動きを、現代の観測技術によって計測可能な形に翻訳します。土中の通気、微生物の活動、地表の経年変化、流域の水脈——目に見えない「傷」と「回復」を、データとして捉え直す働きです。

観測の4つのスケール

  • GIS で観測する ── 流域・地形・植生・土壌水分量の分布を地図上で重ね、マクロな構造と変化の追跡を担う。
  • IoT で観測する ── 各種センサーで土壌水分・温度・CO₂等を継続観測。ミクロな因子の動態を扱う。
  • 3DGS で観測する ── 360度カメラ+3D Gaussian Splatting による空間記録。施工前後の時間変化を3D空間として比較する。
  • 音響で観測する ── 土中ピエゾマイクや水中ハイドロフォンで、聴くことで状態を捉える新しい指標を開発する。

進行中の観測プロジェクト

Project / Observe

Field X空間記録プロジェクト

Insta360 X4 + 3DGS(3D Gaussian Splatting)による空間記録プロジェクト。施工前・施工直後・3ヶ月後・6ヶ月後の根圏・樹冠・地形変化を定点で記録し、施工前後を3D空間として比較できる観測体系。

Project / Observe

Soil Sound Project土中音響観測プロジェクト

ピエゾマイクを土中に設置し、CO₂気泡・ミミズの移動・菌糸の活動音(100Hz〜48kHz)を収録・解析するプロジェクト。「健全な土」と「傷ついた土」で音のパターンがどう違うかを比較し、聴くことで土の状態を捉える新しい指標を確立します。技術設計は完了、PoC(概念実証)に着手しています。

05 / Regenerate

Ⅲ:再生

Regenerate — Restoring the Cycle

日本を代表する自然循環再生の実践者が主催するプロジェクトに参画し、現場で手を動かしながら、傷ついた循環を本来の動きへと戻していきます。土壌再生・樹勢回復・水系循環回復を、土・水・植物を一続きに扱う統合パッケージとして組み立てる働きです。

高田宏臣 氏(NPO法人地球守)、矢野智徳 氏(大地の再生)——第一線の実践者の現場に入り、暗黙知を体得することから始まります。専門家の実践知に観測技術と知覚拡張技術を重ねることで、再現性と社会への接続性を加えるのが mitsulab の役割です。

参画プロジェクト

Project / Regenerate

氷川参道 土壌改善プロジェクト主催:高田宏臣 氏(NPO法人地球守)

『土中環境』の体系化で知られる高田宏臣 氏が主催する、さいたま市・氷川参道の土壌改善プロジェクトに参画。しがら・点穴・素掘り溝による土中環境改善施工を通じて、地上の鎮守の森の樹勢を取り戻すために地下の通気と通水を回復させる実践を継続中。

Project / Regenerate

上野原 大地の再生プロジェクト主催:矢野智徳 氏(大地の再生)

「大地の再生」を提唱・実践する造園家矢野智徳 氏が主催する山梨県上野原のプロジェクトに参画。水脈溝・点穴・風の草刈りを通じて、土地が本来持っていた水と空気の流れを、人の手で読み解きながら取り戻す現場で学んでいます。

Project / Regenerate

樹勢回復プロジェクト樹木医との連携

都市の街路樹・神社境内・里山の樹木に対する根圏改善による樹勢回復。樹木医との連携を進め、地上の手入れだけでは届かない土壌起点の樹勢回復プロトコルを確立します。

Project / Regenerate

水系循環回復プロジェクト水系再生実践者との連携

流域スケールの水の流れの再構築。水系再生に取り組む実践者と連携し、点ではなく流域として水循環を観測し・再生する仕組みを組み立てます。

06 / Immerse

Ⅱ:感覚

Immerse — Opening to the Senses

観測されたデータと再生現場の手応えを、音・触覚・空間に変換し、社会に体験として開きます。書道を起点とするメディアアートや土中音のインスタレーションが、数値では届かない感覚知覚(Qualia)の層に訴えかけ、自然と人間の関係そのものを問い直す装置として動きます。

観測・再生の実践を、データやレポートでは届かない受け手にも届けるための柱です。これからの自然資本の時代において、企業や自治体のステークホルダーと「自然」の関係性を取り戻す体験設計が、再生プロジェクトの持続的な社会実装には欠かせません。

継続中の知覚拡張プロジェクト

Project / Immerse

Qualia Mindメディアアート作品群(60作品超)

書道(日本書作家協会認定 雅号「菱碧」)を起点に、身体性・内的深度・自然との共鳴をテーマにしたメディアアート作品群。『Qualia/sound Ⅰ・Ⅱ』『Qualia/heart Ⅰ』を発表済み、現在60作品超を継続制作中。Instagram @mitsulab_art で順次公開中。

Project / Immerse

Qualia Fieldマルチモーダル没入インスタレーション

Soil Sound Projectの観測データを素材にした音響インスタレーション。土中音・水中音をハイドロフォンでサンプリングし、音・触覚振動・体感温度へと翻訳する知覚拡張装置として展開します。再生の前後の音を体感するインスタレーションにより、自然循環の再生プロジェクトの持続的な社会実装を見据えます。

04 / Roles

3 つの役割

Roles — The hands and eyes of Nature Cycle OS

mitsulab は「再生の主役」ではなく、第一線の実践者と社会の間に立つ媒介です。これら 3 つの役割は、自然循環OS(Nature Cycle OS)を現場で動かす「手と目」として位置づけられます——観測と診断(① 補完する)、体験設計(③ 普及させる)、再生実装(② 統合する)が、自然循環OS の四本柱(観測・感覚・再生・編集)のうち「いま・ここ」を扱う観測・感覚・再生と直接対応します。

Role Ⅰ

補完するComplement

高田宏臣 氏・矢野智徳 氏ら自然循環再生のプロフェッショナルが現場で行う再生施工に、IoT・3DGS・GIS・音響観測といった現代技術のレイヤーを重ねます。施工前後の根圏・樹冠・地形変化を 3D 空間として記録し、土壌水分・温度・CO₂ の継続観測でビフォーアフターを可視化します。

専門家の現場には、長い経験から導かれた暗黙知があります。水の道筋を読む眼、土の硬さを判別する手、しがらの組み方の作法——これらは現場で師から学ぶしかない。mitsulab はその実践に観測のレイヤーを加えることで、「再現性」と「説明責任」を加えます。専門家の判断や成果が、データと共に他地域・他世代へ受け継げる形になることが、補完の核心です。

  • 観測機材の現地設置・運用 ── IoTセンサー・ピエゾマイク・3DGS の定点撮影体制
  • ビフォーアフターの可視化 ── 施工前・直後・3 ヶ月後・6 ヶ月後の比較レポート
  • データ蓄積と解析 ── 同一現場・同一指標の長期データセット構築
  • 暗黙知の言語化サポート ── 専門家のヒアリング・記述・現場語彙の体系化
Role Ⅱ

統合するIntegrate

土壌再生・大地の再生・樹勢回復・水系循環回復——日本にはそれぞれの領域で優れた実践者がいる一方で、土・水・植物が一続きに動く自然循環という共通の地平で、これらを横断的に統合する場はまだ十分に育っていません。mitsulab は「観測 × 感覚 × 再生」を共通軸に、各領域の専門性を一つのパッケージとしてまとめます。

具体的には、現場ごとに「土の問題」「水の問題」「樹木の問題」と分けて発注されがちな案件を、流域・敷地・里山という生態単位で診断し、必要な専門家を必要なタイミングで投入する設計を行います。これにより、土壌改善が樹勢回復を促し、樹勢回復が水系を蘇らせる——循環の連鎖として再生を組み立てられます。

  • 統合診断 ── 土・樹・水を同時に観測し、優先順位とアプローチを設計
  • 専門家ネットワーク調整 ── どの専門家を、どの順序で、どの強度で投入するか
  • 共通言語の整備 ── 各領域の専門用語を「自然循環」という共通フレームに翻訳
  • 循環単位での評価 ── 土・樹・水を独立指標ではなく、相互作用として評価
Role Ⅲ

普及させるDisseminate

専門家の実践は、現場に立つ人々の間では強い説得力を持ちますが、企業・自治体・市民といった「自然との関係を再構築したい層」には届きにくいのが実情です。mitsulab は、専門家の実践を 3 つの言語に翻訳します——観測データ(数値・グラフ)、空間記録(3D・映像)、知覚体験(音・触覚・展示)。

4 言語デジタルメディア「Stillpoint」(日本語・英語・スペイン語・中国語)は、この普及機能の海外展開部分を担います。日本の自然循環再生の実践は、世界的にも先進的な位置にあります。それを国境を越えて届けることで、関心層を広げ、依頼者を呼び込み、協働相手を増やす——この循環が、現場の実践者にも還元されていきます。

  • レポート制作 ── 観測データを企業・自治体向けの読みやすい形へ翻訳
  • 映像・空間記録 ── 3DGS・360° 動画による現場の「体感的可視化」
  • 知覚拡張インスタレーション ── Qualia Field を芸術祭・企業空間に出展
  • 4 言語発信 ── Stillpoint・note・GitHub による国内外への継続発信
補完・統合・普及——3 つの役割は独立した機能ではなく、
専門家の実践を社会に伝えていく一連の流れとして動きます。
08 / Overview

事業概要

Overview — Nature Cycle OS at the core

mitsulab は、自然循環OS を通じて One Health の実現に貢献する研究所です。本ページでは、その中核となる方法論プラットフォーム 自然循環OS(Nature Cycle OS)One Health との接続を改めて確認し、続いて自然循環OS を現場で動かす事業形態役割、そしてその実装が「いま」必要となる三つの背景(政策・地球環境・技術)を案内します。

自然循環OS は、One Health の環境次元の実装

One Health(ワンヘルス)とは、人・動物・植物・環境の健康が相互に依存し合うという認識に基づく統合的アプローチで、WHO(世界保健機関)・FAO(国連食糧農業機関)・WOAH(世界動物保健機関)・UNEP(国連環境計画)の四機関合意として国際的に公式化されています。コロナ禍が示したように、野生動物に由来する感染症の 60% 以上が動物起源(zoonosis)であり、抗菌薬耐性・食品安全・気候変動・生物多様性——いま私たちが直面する課題の多くは、人・動物・環境を分けて扱う限り、解けません。

mitsulab は、その「環境」次元——土壌劣化・水循環の断絶・生物多様性の減少が、動物と人の健康へ波及していく上流——に向き合います。土・水・植生・生態系が分野ごとに切り分けられ、循環を観る視点がほどけてしまった現状を、ひとつに結び直す。そのための実装プラットフォームが、自然循環OS(Nature Cycle OS)です。両者の関係は、医療制度(上位枠組み)と個別の治療プロトコル(実装)の関係に近い、とも言えます。

自然循環OS は、観測(Observe)/感覚(Immerse)/再生(Regenerate)/編集(Edit:Stillpoint)の 4 つの実行レイヤー(四本柱)で構成され、ほどけた自然循環をひとつに結び直すための mitsulab の方法論プラットフォームとして機能します。詳細は 自然循環OS タブを参照してください。

事業基盤の構成

自然循環OS という中核から派生する、事業実装のための 5 つの章へジャンプできます。

事業形態と役割は「自然循環OS をどう現場で動かすか」、3 つの背景は「なぜいま、ほどけた循環を One Health の枠組みでひとつに戻す必要があるか」を語ります。両者を往復することで、mitsulab の事業の輪郭が立ち上がります。

08 / Practice

事業形態

Practice — Sectors & Engagement Patterns
08 · 03 / Sectors

想定する事業形態

Sectors — Operating Forms of Nature Cycle OS

mitsulab の事業形態は、いずれも自然循環OS(Nature Cycle OS)の運用フォームとして設計されています。診断パッケージ・施工調整・継続観測・体感ワークショップ——これらはすべて、自然循環OS の四本柱(観測・感覚・再生・編集)を、案件・現場の文脈に合わせて組み立てたものです。具体的なサービス内容・料金・スコープは、お問い合わせ後の対話の中で個別に組み立てます。

自然循環OS は、One Health(人・動物・環境の健康の不可分)の「環境」次元——ほどけた自然循環の機能不全——を、現場で実装するプラットフォームです。そのため本事業形態は、企業の TNFD 開示・自治体のネイチャーポジティブ施策のみならず、One Health 文脈の国内外の補助金・国際枠(環境省・農林水産省・GEF・財団等)との接続可能性を持ちます。詳細は 自然循環OS を参照。

想定する協働セクターは次の 4 つです。

Sector 01 · For Businesses

企業向けTNFD 開示・自然資本投資・社員エンゲージメント

所有・関与する自然資本(社有林・保有不動産・工場敷地・社員研修拠点など)の状態評価から再生・モニタリング・社員体験までを一貫して支援します。TNFD 開示・サステナビリティレポートに資する形で、データ・記録・体験を整えます。

想定する依頼内容

  • 自然循環の状態評価:保有地の土・樹・水の現況を統合診断したレポート
  • 再生施工の調整:専門家ネットワーク経由で必要な再生施工を計画・実施
  • 継続モニタリング:IoT・3DGS・GIS による定期観測と変化レポート
  • 社員向け体感ワークショップ:Qualia Field 等を活用した社内エンゲージメント施策
  • TNFD・サステナビリティレポート支援:開示資料に組み込めるデータ・写真・物語の提供
Sector 02 · For Local Governments

自治体向けネイチャーポジティブ施策・流域管理・住民参加

行政の現場・住民・議会という 3 つの言語を行き来できる土木技師としての経験を活かし、自治体のネイチャーポジティブ施策と住民理解の橋渡しを担います。流域単位で自然資本を可視化し、優先エリアでの再生施工を実装し、その成果を住民・議会に届けるまで。

想定する依頼内容

  • GIS 自然循環マッピング:流域単位での土壌・植生・水脈データの統合可視化
  • 再生優先エリアのスコアリング:限られた予算でどこから着手すべきかの根拠資料
  • 再生施工の専門家連携:地球守・大地の再生・樹木医ネットワーク経由
  • 住民向けの可視化資料:3D 空間や体感型展示を活用した合意形成支援
  • 政策評価レポート:施策実施後の効果を定量・定性両面で測定
Sector 03 · For Specialists / NPOs

専門家・実践団体向け実践の補完・記録・対外発信

すでに再生実践に取り組まれている方々の現場における、観測・記録・発信という、専門家自身では手が届きにくい領域を分業として担います。実践の主役はあくまで現場の専門家。mitsulab はそれを社会に届けるレイヤーを支えます。

想定する依頼内容

  • 現場の観測・記録:施工前後の 3DGS 空間記録・IoT モニタリング
  • 発信素材の制作:写真・映像・データグラフィック・ライティング
  • 海外向け 4 言語発信:Stillpoint 連携で日本の実践を世界へ
  • 講座・研修のドキュメント化:暗黙知の体系化と教材化
  • 共同研究・寄稿:論文・書籍・カンファレンス用の素材整理
Sector 04 · For Cultural / Art Sectors

文化・芸術領域向け芸術祭・展示・サイトスペシフィック作品

芸術祭・美術館・企業の文化空間において、自然循環をテーマとする作品の出展・制作を行います。観測データを素材として用いるため、抽象的な美意識だけでなく、現場の実証性に裏付けられた表現が可能です。

想定する依頼内容

  • 知覚拡張インスタレーション出展:Qualia Field(土中音)・Qualia Mind(書道メディアアート)
  • サイトスペシフィック作品制作:会場の自然循環を観測し、その場で生成される作品
  • アーティストトーク・レクチャー:自然と人間の関係についての知的対話
  • 大地の芸術祭等への参加:越後妻有・Ars Electronica・MUTEK Japan 等を視野
  • 研究機関との共同制作:科学的観測とアートの境界を行き来する作品
どのセクターでも、出発点は同じです——
傷ついた自然循環を、観測し、感じ、再生するための媒介として動きます。
04 · A / Policy

政策的背景

Policy Context — 自然資本が企業・国家の責務へ

2020 年代に入り、気候(Climate)に続く地球規模の論点として「自然(Nature)」が国際的なアジェンダの中心に据えられました。TCFD から TNFD へという流れに象徴されるように、企業・金融機関は気候だけでなく、生物多様性・生態系・自然資本に関わる依存とインパクトを開示することが求められはじめています。

2023 / 国際

TNFD

自然関連財務情報開示タスクフォース。2023 年 9 月に最終フレームワーク v1.0 を公開。企業に自然への依存・インパクト・リスク・機会(LEAP アプローチ)の開示を求める。日本では 2026 年以降、上場企業を中心に本格適用フェーズへ。

tnfd.global →
2022 / COP15

ネイチャーポジティブ

2030 年までに自然の損失を止め、回復軌道に乗せるという国際合意。昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の中核思想であり、企業活動・土地利用・サプライチェーンを通じて「自然をプラスに転じる」ことが求められる。

cbd.int/gbf →
2030 目標

30by30

2030 年までに陸と海のそれぞれ 30% を健全な生態系として保全する目標。日本では国立公園・保護区に加え、民間の取り組みを認定する OECM / 自然共生サイト制度が始動。里山・社寺林・企業敷地もカウント対象に。

env.go.jp/30by30 →
GBF / 23 ターゲット

Global Biodiversity Framework

COP15 で採択された生物多様性条約の新枠組。23 のアクションターゲットを設定し、保護区拡大・劣化生態系の 30% 回復・有害補助金の改革・大企業への自然関連開示義務化などを含む。各国は National Biodiversity Strategy(NBSAP)の改訂を求められる。

cbd.int/gbf/targets →
2024 / 日本

ネイチャーポジティブ経済移行戦略

環境省・農林水産省・経産省などが 2024 年 3 月に策定。日本経済を「自然の損失を前提とした構造」から「自然回復を価値創出に組み込む構造」へ転換する道筋を示す。地域での再生事業・グリーンインフラ・自然資本評価の市場化が進む。

env.go.jp →
2024 / EU

EU Nature Restoration Law / CSRD

2024 年に EU 理事会で採択された自然再生法は、2030 年までに EU 域内の劣化生態系の 20% を回復させる法的拘束力を持つ。あわせて CSRD(企業サステナビリティ報告指令)EU タクソノミーにより、自然関連情報の開示が EU 域内の大企業・域外サプライヤーにも波及している。

environment.ec.europa.eu →

これらは別々の制度に見えて、実は一つの方向を指しています。「自然資本を測り、開示し、回復させる」 ── 国家・企業・地域の意思決定基盤に自然が組み込まれていく、不可逆な構造変化です。mitsulab はこの潮流の現場側のインフラとして、自然循環OS(Nature Cycle OS)を通じて土・水・植物の循環を実際に観測し・再生する役割を担います。さらにこれらの政策潮流は、One Health(人・動物・環境の健康の不可分)という国際枠組みと地続きであり、自然循環OS は One Health の「環境」次元の実装ツールとして、政策接続の文脈を持ちます。

関連する地球環境的背景は 地球環境的背景 タブへ。引用論文は 関連論文 タブへ。

04 · B / Planetary

地球環境的背景

Planetary Context — 9 つの惑星限界と土壌の劣化

地球システム自体は既に複数の境界線を超え、土・水・生命の循環は静かに崩れ始めています。政策の数値目標が立ち上がる前提として、その実態を把握しておく必要があります。

B-1. プラネタリーバウンダリー(Planetary Boundaries)

2009 年に Rockström らが提唱し、ストックホルム・レジリエンス・センターが更新を続けている地球システムの「安全な活動空間」の概念。地球を一つのシステムとして見たとき、人類が安定的に存続できる9 つの境界が定義されています。

2023 年最新評価(Richardson et al., Science Advances)では、9 つの境界のうちすでに 6 つが安全域を超過していると報告されました。

  • 気候変動(CO₂ 濃度・放射強制力)
  • 生物圏完全性(生物多様性・遺伝的多様性)
  • 土地利用変化(森林伐採・里地里山の喪失)
  • 生物地球化学的循環(窒素・リンの過剰流出)
  • 淡水循環(緑水・青水の改変)
  • 新規物質(化学物質・プラスチック・PFAS など)

mitsulab が現場で扱う土・水・植物の循環は、このうち ③ 土地利用変化・④ 生物地球化学・② 生物圏完全性の 3 つに直接的に関わります。地球規模の境界を、足元の流域・林・畑のスケールで取り戻す作業です。

B-2. 土壌劣化(Soil / Land Degradation)

地球の陸地はいま、静かに、しかし広範に痩せ続けています。FAO の Status of the World's Soil Resources(2015)は、世界の土壌の 33% がすでに劣化していると報告しました。

表土流失

数十年で形成される表土が、雨と耕起で年間数 mm 単位で失われる。再生には数百年〜千年を要する。

有機物・土壌生物の減少

耕起・化学肥料偏重により土壌有機炭素が減少。菌根菌・ミミズ・微生物群集が単純化し、土が呼吸を失う

日本の山林・里山

人工林の手入れ放棄・里山管理の途絶により、土壌の硬化・水源涵養力の低下・生態系の単純化が進む。

B-3. 生物多様性の喪失

IPBES Global Assessment(2019)は、現在約 100 万種が絶滅の危機にあり、これは人類史上前例のない速度であると報告しました。 WWF/ZSL の Living Planet Index 2024 は、1970 年以降に監視対象の脊椎動物の個体群サイズが平均 73% 減少したことを示しています。 重要なのは、絶滅は単に「種が消える」のではなく、生態系の機能(送粉・分解・水循環・土壌形成)が失われていくということです。

B-4. 水循環の崩壊

流域スケールで見ると、森林劣化・農地の不浸透化・地下水の過剰利用により、湧水の枯渇・小河川の干上がり・地下水位の低下が日本各地で報告されています。土壌が水を蓄える力(保水・浸透)の低下は、洪水と渇水の両方を悪化させ、植生・生物・人の暮らしの基盤を同時に揺るがします。

なぜ「統合的な再生」なのかWhy integrated regeneration matters

政策・地球環境の両面で課題は分野ごとに整理されていますが、自然はそれらを一続きの循環として動かしています。土壌劣化を独立に扱えば生物多様性を見落とし、生物多様性だけを扱えば水循環を見落とし、水循環だけを扱えば炭素を見落とす ── 個別最適は、現場では機能しません。この 四本柱(観測・感覚・再生・編集)のパッケージ(自然循環OS)としてしか応答できない領域に、mitsulab は腰を据えます。さらに、こうした環境の機能不全は One Health(人・動物・環境の健康の不可分)の上流であり、自然循環OS の実装は環境次元から人・動物の健康へと波及する予防的健康施策としても機能します。

関連する政策的背景は 政策的背景 タブへ。引用論文は 関連論文 タブへ。

04 · C / Technology

技術的背景

Technology — Why the integration is now possible

2020年代に入り、観測・AI・データ基盤・知覚拡張の四領域が同時に成熟期を迎えた。かつては国家プロジェクト規模でしか実現できなかった「流域全体の高解像度観測」と「生態系の体感的翻訳」が、個人〜小規模研究所のスケールで実装可能になった。mitsulab はこの技術的同時性のうえに成立する事業である。

A. 観測技術の革新Observation Revolution

2023〜

3D Gaussian Splatting / NeRF

現場の3D記録コストが100分の1に。スマートフォンや360度カメラで撮った画像群から、樹冠・地形・森内空間をフォトリアルに再構築できる。森林の経年変化の定量比較が現実的に。

広域・長期

IoT・LoRaWAN・LPWA

数km圏を超低消費電力で結ぶ無線通信規格が普及。土壌水分・地温・CO2 等のセンサを山間地に数年単位で設置でき、流域単位の連続観測が個人レベルで可能になった。

非破壊

環境DNA(eDNA)メタバーコーディング

水・土壌・空気の微量サンプルから、その場に生息する生物相全体を一括検出。捕獲を伴わず、希少種・微生物群集まで含めた生物多様性の網羅的モニタリングを実現する革命的技術。

オープンデータ

小型ハイパースペクトル・衛星RS

Sentinel-2 や Planet、Maxar の高頻度衛星画像が無償〜低コストで入手可能に。林分の樹種判別・植生指標・荒廃度評価を、地上観測と組み合わせて高解像度に実施できる。

24h録音

生物音響学・パッシブアコースティック

AudioMoth 等の数千円クラスの録音デバイスで、森の音を24時間×数ヶ月単位で記録。鳥類・コウモリ・昆虫の活動を定量化し、生態系の健全度指標として運用できる時代に入った。

統合観測

マルチモーダル現地観測

3D・音・DNA・センサ・衛星を同一座標系で重ね合わせる「四次元生態観測」が個人スケールで成立。森林の空間・時間・生物・物理を統合した記述が可能になった。

B. AI / フィジカルAI の発展AI / Physical AI

2023〜

基盤モデル時代(LLM / VLM)

大規模言語・視覚モデルの登場により、土壌・植生・音響・画像といった異種データを単一のフレームで統合解釈できるように。専門家でなくても生態系の意味抽出が可能になった。

大規模DS

生態系モデリングAI

iNaturalist・GBIF など数億件規模の生物多様性データセットで学習されたモデルが公開。種同定・分布推定・生息適地予測を、現場ユーザが直接利用できる。

流域シミュ

デジタルツイン化

流域・林分単位のシミュレーションが、市販GPU 1枚で実行可能に。間伐・植栽・治水介入の効果を事前に検証し、現場介入の意思決定を高度化できる。

2024〜

SLAM × ロボティクス

Visual-Inertial SLAM の成熟と低価格四脚・ドローンの普及で、自動観測ロボットが森林内を自律巡回する時代に。長期・反復観測のスケーラビリティが飛躍的に向上した。

エッジAI

現場推論デバイス

Jetson・Raspberry Pi 5 クラスで、現場での画像・音声推論が完結。通信が困難な山間地でもリアルタイム解析が実装でき、観測 → 解釈 → 行動のサイクルが現場で閉じる。

フィジカルAI

自然界アクチュエーション

観測だけでなく、灌水・播種・間伐補助などの物理介入を AI が制御する段階へ。自然循環再生の「実装ロボット」が現実的な視野に入りつつある。

C. データ基盤・標準化Data Infrastructure

オープン

GBIF / Living Atlases

世界25億件超の生物分布データが API で利用可能。研究データの相互運用性が確立し、ローカルな現地観測を即座にグローバルな文脈に接続できる。

TNFD/SBTN

自然関連データ標準

ENCORE・SBTN・TNFD LEAP など、企業の自然資本評価フレームワークが標準化。観測データを直接 ESG レポートや補助金申請に接続できる時代に入った。

無償化

QGIS / Google Earth Engine

商用GISの機能が無償ツールで完全に再現可能に。ペタバイト級の衛星アーカイブにブラウザから直接クエリでき、空間解析の民主化が完了した。

D. 知覚拡張・没入技術Sensory Translation

触覚

ハプティクス・ファントムボディ

BodyTransfer 等の身体所有感操作技術で、森・土・水の物理感覚を遠隔他者に伝達できるように。観測データを「体感」として翻訳する経路が拓けた。

Ambisonics

空間音響・サウンドスケープ

3次音場の録音・再生機材が個人で導入可能になり、森の音場を 360度で記録・再生できる。生態系の聴覚的没入体験が編集可能なメディアに。

2024〜

VR / AR / MR(Vision Pro 以降)

高解像度パススルー HMD の普及で、3DGS で記録した森を別の場所で「歩ける」体験として配信可能に。教育・研修・市民科学への接続点が広がった。

3DGS・IoT・eDNA・基盤モデル・空間音響・XR——これらは別々のコミュニティで発展してきたが、2020年代半ばに同時に「個人が扱える」段階へ達した。mitsulab の独自性は、この技術的同時性を一人の制作者の手元で統合し、観測から体感翻訳までを一気通貫で設計できる点にある。技術がここまで揃った今でなければ、自然循環OSを One Health の環境次元の実装プラットフォームとして社会に提示することは成立しなかった。

05 / OS

自然循環OS

Nature Cycle OS — The Core of mitsulab

自然循環OS(Nature Cycle OS)は、mitsulab の大元(核)に置かれた実装プラットフォームです。

同時にこれは、One Health(人・動物・環境の健康の不可分)の「環境」次元を、現場から実装するための方法論プラットフォームでもあります。

One Health は WHO・FAO・WOAH・UNEP の四機関合意による国際枠組みで、人・動物・植物・環境の健康が不可分であるとする統合的アプローチです。mitsulab はその「環境」次元に向き合い、自然循環OS を通じて、土壌・水循環・生物多様性の機能不全を診断・回復することで、上流から人・動物の健康に資する仕組みを設計します。

自然循環OS は、観測・感覚・再生・編集の四つのレイヤーが有機的につながり、ほどけた自然循環をひとつに結び直す仕組みです。これは個別の製品でも SaaS でもなく、専門家・研究者・住民・自治体・企業が共に育てていくとして実践しています。

自然循環OS の 4 つの実行レイヤー

自然循環OS は、次の 4 つの実行レイヤー(四本柱)として動きます。観測・感覚・再生が「いま・ここ」の自然循環を扱い、編集が「古今東西」の自然循環の実践と知恵を扱います。四つは独立した工程ではなく、相互に深く関連し合い、補完し合うことではじめて自然循環の全体像が立ち上がります。

Layer Ⅰ ── Observe

Ⅰ:観測Observe Layer

IoT・GIS・3DGS・環境DNA・音響観測——多様な観測技術が、土・水・植物の動態を継続的に取り込む層。マクロ(流域)とミクロ(土中)を行き来しながら、自然循環の状態を計測可能な形に翻訳します。

観測 の詳細を見る ──

Layer Ⅱ ── Immerse

Ⅱ:感覚Immerse Layer

観測と再生のデータを、音・触覚・空間といった人間の感覚に翻訳する層。Qualia Mind をはじめとする知覚拡張アートが、数値では届かない「感じる」の領域を社会に開きます。

感覚 の詳細を見る ──

Layer Ⅲ ── Regenerate

Ⅲ:再生Regenerate Layer

土中環境改善・大地の再生・樹勢回復・水系循環回復——日本に蓄積されてきた再生実践知を体系化し、観測データに基づく優先順位とともに現場へ展開する層。専門家・施工者・住民が共通の言語で扱えるようにします。

再生 の詳細を見る ──

Layer Ⅳ ── Edit

Ⅳ:編集Edit Layer

編集工学の考えに基づき、古今東西の自然循環の実践と知恵を横断的にまとめる層。観測・感覚・再生が「いま・ここ」を扱うのに対し、編集は「古今東西」を扱い、四本柱を相互に厚くします。その実践媒体が、4 言語デジタルメディア Stillpoint です。

媒体名は T.S. エリオット「Burnt Norton」の "still point" に由来

レイヤーを統合する技術

観測・感覚・再生の現場レイヤーをつなぐのは、フィジカルAI を中核とする統合技術群。個別のツールではなく、自然循環という共通の対象を複数の角度から扱う一つのシステムとして設計します。

  • フィジカルAI ── 現場のセンサー・ロボットと連携し、リアルタイムに学び、状態予測や施工提案を返す。OS の中枢。
  • IoT・センサーネットワーク ── 土壌水分・温度・CO₂・音響など多モードのデータを観測層へ供給。
  • GIS・3DGS ── 流域・地形・施工前後の空間記録。マクロ構造と時系列変化を担う。
  • 環境DNA(eDNA) ── 生態系の多様性を非破壊で観測。
  • xR(VR/AR/MR) ── 観測・再生・感覚を体験可能な形に変換する出力層。
  • ロボティクス ── 自動観測・サンプリング・施工省力化を担う手足。

人間 × 自然 × 機械の三位一体

自然循環OS が向かうのは、人間が自然を「制御する」未来ではありません。観測で自然の動きを聴き、再生で循環を取り戻し、感覚翻訳で人間と自然の関係そのものを修復する——その全てを支える機械を、自然と人間の間に立つ媒介として位置づけます。

機械は自然の代替ではなく、人間の感覚の延長。AI は判断を奪うものではなく、現場の感覚と対話する道具。再生は単独で行うのではなく、自然自身がもつ回復力を、人と機械が共に支えるものとして設計されます。

人間が自然を制御するのでも、機械が人間に取って代わるのでもない。
人間・自然・機械が互いの感覚を交換しながら、自然循環を共に支える。
その器として、自然循環OS を社会と共に育てていきます。
07 / Interplay

相互関係

Interplay — How the Four Practices Weave Together

自然循環OS の四本柱——観測・感覚・再生・編集——は、独立した工程ではありません。一方向に進むのでもありません。すべてが、すべてに影響し合っています。観測が感覚・再生・編集を変え、感覚が観測・再生・編集を変える。ひとつの実践だけでは自然循環の全体像は見えにくく、四つが互いを照らし合うことではじめて、ほどけた自然循環をひとつに捉え直すことができます。

このページでは、四本柱が互いにどう影響し合うのか——12 の相互関係を整理します。

観測 から from Observe

観測 → 感覚

IoT・3DGS・音響観測が捉えたデータ(土中音、根圏の 3D 変化、センサー値)が、そのまま感覚表現の素材になる。数値は、音・触覚・空間へと翻訳される一次資源です。

観測 → 再生

観測は、どこから再生に着手すべきかの優先順位と根拠を与える。施工は勘ではなく、観測されたデータの上に立ちます。

観測 → 編集

観測で得た知見が、古今東西の事例と照らし合わされ、編集の問いを生む。「いま観ているこの現象を、過去の人々はどう観ていたか」。

感覚 から from Immerse

感覚 → 観測

感覚で気づいた違和感や微細な変化が、次に何を観測すべきかを教える。身体は、計器がまだ捉えていない兆候を先に察知します。

感覚 → 再生

「自分ごと」としての感覚的な納得が、再生への動機と合意を生む。データだけでは人は動かない——感じて、はじめて手が動きます。

感覚 → 編集

身体で感じた質感が、編集のテーマと語り口を方向づける。何を古今東西から拾い、どう編むか——その選択は感覚から始まります。

再生 から from Regenerate

再生 → 観測

再生施工の前後の変化が、新たな観測対象になる。何をしたら、どう変わったか——再生は観測に検証の機会を返します。

再生 → 感覚

再生現場の手応え(土の匂い、水の戻り、風の通り)が、感覚表現の源泉になる。現場でしか得られない質感が、作品の核になります。

再生 → 編集

再生で積み上がった実践知が、古今東西の事例として編集・記録される。いまの現場が、未来の誰かの参照点になります。

編集 から from Edit

編集 → 観測

古今東西の事例が、観測の着眼点を広げる。二十四節気、修道院の暦、先住民の伝統知——昔の人が観ていたものを、いま観測し直す視点を与えます。

編集 → 感覚

編集された物語と文脈が、感覚体験に奥行きを与える。同じ土に触れても、その土地の歴史を知って触れれば、感じ方が変わります。

編集 → 再生

古今東西に蓄積された知恵が、再生手法の選択肢を増やす。世界各地の自然循環の作法は、いまの現場で使える実装のヒントの宝庫です。

四本柱は、この 12 の相互関係を通じて、ひとつの網の目として動きます。観測 → 感覚 → 再生 → 編集 という順路は、あくまで説明のための一筋にすぎません。実際には、どの実践も同時に他の三つを養い、養われている。その網の密度こそが、自然循環OS の働きそのものです。

09 · 05 / Contact

お問い合わせ

Contact — Get in touch

自然循環再生診断・GIS マッピング・IoT 観測・研修・作品展示・共同研究・取材・講演・芸術祭出展などのご相談を承ります。自然循環OS の第 4 の柱「編集(Edit)」として 4 言語デジタルメディア Stillpoint を運営しており、リジェネラティブ思想の対話・寄稿のご相談もお気軽にお寄せください。

10 / Reading

関連書籍

Reading — Books that inform our practice

mitsulab の実践は、現場の経験だけでなく、長年積み上げられてきた書物との対話の上に成り立っています。自然循環再生・知覚・人類学・思想の各領域から、特に影響を受けた書籍をジャンル別に整理しました。

自然循環再生・土壌の実践書

現場で参照する第一線の実践者による技法・思想

高田 宏臣

『土中環境』建築資料研究社/2020

NPO 法人地球守の高田宏臣 氏による、土中の水と空気の循環に焦点を当てた実践書。しがら・点穴・素掘り溝など、地形を読みながら土中環境を回復させる技法を体系化。土地を診る眼の基礎を養う。

大内 正伸 / 矢野 智徳 監修

『〈大地の再生〉実践マニュアル』農山漁村文化協会/2022

「大地の再生」を提唱・実践する造園家 矢野智徳 氏の技法を体系的にまとめたマニュアル。水脈溝・点穴・風の草刈りを通じて、土地が本来持っていた水と空気の流れを取り戻す。

安宅 和人 ほか

『風の谷という希望』2023〜(風の谷を創る運動)

地方の里山を 「都市の対極ではなく、人類の希望の地」として再構築する思想と実践。AI 時代に技術と自然を結び直すビジョンを提示。

福岡 正信

『わら一本の革命』春秋社/1975

自然農法を実践した福岡正信 氏による、農業と思想の書。「人間が手を加えれば加えるほど自然は痩せる」という逆説。世界中で読み継がれる名著。

ビル・モリソン

『パーマカルチャー — 農的暮らしの永久デザイン』農山漁村文化協会/1993

パーマカルチャーの提唱者モリソンによる、持続可能な農的暮らしのデザイン原理。自然のパターンを読み、エネルギー・水・植物を循環させる土地利用の体系化。

農山漁村文化協会 編

『日本農業全集』(64・65 巻)農山漁村文化協会

江戸期から近代までの日本の農書を集成した一大シリーズ。第64・65 巻には、地域の風土に根ざした農法が記録され、現代の自然循環再生の源流を知る。

加藤 拓 ほか

『土壌図鑑』創元社

日本各地の土壌を、断面写真と解説で紹介する図鑑。土壌の多様性を視覚的に理解し、現場での土壌診断のリファレンスとして活用。

ソーヤー海 ほか

『地球再生型生活記』2024 / リジェネラティブ生活実践

リジェネラティブ(再生型)な暮らしの実践記録。地球環境を回復させながら生きる具体的な日常技法と思想を提示。

生命・生態系の科学

微生物から樹木まで、生命のつながりを問う書

スザンヌ・シマード

『マザーツリー』岩波書店/2023(原著 2021)

森林生態学者シマードによる、樹木同士が菌根菌ネットワークでつながるという発見の物語。「マザーツリー」が森を支える構造の解明。

マーリン・シェルドレイク

『絡まり合う生命 — 菌類が世界を作り変える』河出書房新社/2022(原著 Entangled Life, 2020)

生物学者シェルドレイクによる、菌類が地球の生命系を編む姿の描写。土壌・植物・大気がいかに菌糸ネットワークで絡まり合っているかを科学と詩情で語る。

ヤーコプ・フォン・ユクスキュル

『生物から見た世界』岩波文庫/2005(原著 1934)

「環世界(Umwelt)」概念の提唱者ユクスキュルが、各生物が独自の感覚世界に生きていることを示した古典。人間中心を相対化する思考の出発点。

ステファノ・マンクーゾ

『植物は未来を知っている』NHK 出版/2018(原著 2017)

植物神経生物学のマンクーゾが、植物の知性・感覚・コミュニケーションを 9 つの能力に分けて解説。植物観を根本から問い直す。

山本 久史 ほか

『拡張生態系 — 自然と人工の境界の再設計』2023

自然生態系と人工(都市・インフラ)を分けず、「拡張された生態系」として一体的に設計する思想。デジタル技術が自然と人間の境界を再構成する未来像。

人類学・人新世の思想

人間と非人間が共に生きる時代の思考

奥野 克巳・近藤 祉秋・近藤 宏 編

『モア・ザン・ヒューマン — マルチスピーシーズ人類学と環境人文学』以文社/2021

人間中心主義を超え、多種(モア・ザン・ヒューマン)の絡まり合いから世界を捉え直す人類学の最前線。動物・植物・菌・微生物との共生を問う論集。

奥野 克巳 ほか 編

『たぐい』(マルチスピーシーズ人類学)亜紀書房/2019〜

多種の絡まり合いを問う日本独自のマルチスピーシーズ人類学誌。「たぐい」=種・類・仲間という多義的な日本語に、種を越えた関係を映す思考の場。

ティム・インゴルド

『人類学とは何か』亜紀書房/2020(原著 2018)

人類学者インゴルドが、人類学を「人間と世界の関係を学び直す哲学」として再定義。観察・関与・想像を編んだ知の在り方を提示。

ブルーノ・ラトゥール

アクター・ネットワーク理論『社会的なものを組み直す』法政大学出版局/2019(原著 2005)

人間と非人間(モノ・テクノロジー・自然)を対称的に扱う社会理論。「社会」とはアクターたちのネットワークであるという視点が、自然と人間を考えるベースに。

ジェイムズ・ラブロック

『ガイアの思想 — 生命と地球の進化』工作舎/1984(原著 1979)

地球を一つの生命システムとして捉える「ガイア仮説」の原典。地球と生命が相互に環境を調整するという視座は、現代の自然観に深い影響を残す。

ジェイムズ・ラブロック

『ノヴァセン — 超知能が地球を引き継ぐ』NHK 出版/2020(原著 Novacene, 2019)

ラブロック晩年の著作。人新世(Anthropocene)の次に到来する「ノヴァセン」では、AI と人間が共生して地球を支えるという未来像を提示。

篠原 雅武 ほか

『アンビエンス — 人新世の環境詩学』月曜社/2022 頃

人新世における環境哲学・詩学を編む論集。「環境の質感(アンビエンス)」を概念化し、定量化されない自然との関係を思考する。

寺田 匡宏 ほか 編

『人文地球環境学』京都大学学術出版会

地球環境を、自然科学だけでなく人文学から問い直す学際的取り組み。環境と社会・歴史・文化を編む新しい知の枠組み。

編者複数 / 国際的論集

『ポスト人新世の芸術』2020年代

人新世以降の芸術実践を問う。気候・生態系・テクノロジーが一体となる時代に、アートは何を担うのか。Qualia Practice の理論的背景。

知覚・身体・クオリア

「感じる」を社会に開くための科学と思索

茂木 健一郎

『クオリア入門 — 心が脳を感じるとき』筑摩書房/2006

脳科学者茂木健一郎が、「主観的な感覚の質感(クオリア)」を科学と哲学の境界で論じる入門書。Qualia Practice の名称の出発点。

茂木 健一郎

『クオリアと人工意識』講談社現代新書/2020

AI 時代における意識とクオリアの問題を再検討。「機械は感じることができるか」という問いから、人間の意識の本質を逆照射する。

仲谷 正史・筧 康明・三原 聡一郎・南澤 孝太

『触楽入門』朝日出版社/2016

触覚を技術と表現の領域として開拓する研究者・アーティスト 4 名による触覚入門書。ハプティクスとアートの交差点を実例で示す。

玉城 絵美

『BODY SHARING — 身体共有の世界』大和書房/2022

BodySharing の研究者玉城絵美が、身体感覚を他者やテクノロジーと共有する未来を提示。Qualia Field の知覚拡張インスタレーションと共鳴する思考。

稲見 昌彦 ほか 編著

『自在化身体論』エヌ・ティー・エス/2021

JST ERATO「自在化身体プロジェクト」の成果論集。テクノロジーで身体を拡張・自在化する研究の最前線をまとめた書。

デイブ・アスプリー ほか

『バイオハッキング』関連書複数

身体・脳・代謝を科学的に最適化する 「バイオハッキング」の思想と実践。自然と人体を一つの系として扱う視座が、Qualia Practice にも通じる。

音と環境のレコーディング

Soil Sound Project / Qualia Field の理論的背景

柳沢 英輔

『フィールド・レコーディング入門 — 響きの科学から音楽まで』フィルムアート社/2022

フィールドレコーディング研究者の柳沢英輔が、環境音の収録と聴取の理論と実践を体系化。Soil Sound Project の方法論的基礎。

鳥越 けい子

『サウンドスケープ — その思想と実践』鹿島出版会/1997

マリー・シェーファーのサウンドスケープ概念を日本に紹介・展開した古典。「土地の音風景」を文化資源として扱う視座は、現場の音を診る基礎。

アラン・リクト

『SOUND ART — 芸術の地平を超えて、耳と目の間に』フィルムアート社/2010(原著 2007)

20世紀後半以降のサウンドアートの系譜を、ジャンル横断で整理した必読書。音と視覚の境界を問う実践は、Qualia Field の参照点。

テクノロジーと自然

技術が自然との関係をどう編み直すかの問い

落合 陽一

『デジタルネイチャー — 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂』PLANETS/2018

メディアアーティスト落合陽一が、デジタルと自然が一体化した時代の美学を提示。「計算機自然」のビジョンは、自然循環OS の実践に通じる。

ケヴィン・ケリー

『テクニウム — テクノロジーはどこへ向かうのか?』みすず書房/2014(原著 2010)

WIRED 創刊編集長ケリーが、テクノロジーを生命進化の延長として捉える思想書。自然と技術を二項対立ではなく連続体として見る視点。

フローレンス・ウィリアムズ

『NATURE FIX — 自然が最高の脳をつくる』NHK 出版/2017(原著 The Nature Fix, 2017)

科学ジャーナリストが、自然との接触が脳と心身に与える影響を世界の研究から検証。都市生活者の自然との再接続を考える根拠資料。

ティモシー・モートン

『自然なきエコロジー — 来たるべき環境哲学に向けて』以文社/2018(原著 Ecology Without Nature, 2007)

哲学者モートンが、「自然」という観念そのものをエコロジーから手放す過激な提案。観念上の純粋な「自然」を捨てたところから始まる新しい環境思想。

※ 各書籍の出版年・出版社は、流通状況や版により異なる場合があります。書籍タイトルの表記は原書・日本語版の慣用に従っています。

06 / Terms

用語解説

Key Terms — organized by Observe / Immerse / Regenerate / Edit

mitsulabが扱う領域の専門用語を整理しました。冒頭の Core ── 中核概念には、HP 全体の起点となる「自然循環OS」「One Health」「四本柱(観測・感覚・再生・編集)」を最重要用語として配置しています。続く Foundation 以降は、四本柱(観測 / 感覚 / 再生 / 編集)別の分類です。

Core ── 中核概念(最重要)

Core

自然循環OS(Nature Cycle OS)

mitsulab の大元(核)に置かれた、土・水・植物の循環機能を診断・回復するための実装プラットフォーム概念。One Health 枠組みにおける「環境」次元の実装ツールとして、観測(Observe)・感覚(Immerse)・再生(Regenerate)・編集(Edit)の 4 つの実行レイヤー(四本柱)で動きます。個別の製品でも SaaS でもなく、専門家・住民・自治体・企業が共に育てるとして実践しています。HP 全体のあらゆる章は、この自然循環OS から派生しています。

Core

One Health(人・動物・環境の健康の不可分)

人・動物・植物・環境の健康が相互に依存し合っているという認識に基づく、統合的アプローチ。WHO・FAO・WOAH・UNEP の四機関(Quadripartite)が合意する国際枠組みであり、新興感染症(zoonosis の 60% 以上が動物起源)・抗菌薬耐性・食品安全・生物多様性・気候変動・土壌劣化を横断する。mitsulab の自然循環OS は、One Health の「環境」次元を、土の側から実装する方法論プラットフォームとして位置づけられます。

Core

四本柱(観測 / 感覚 / 再生 / 編集 ── 4 つの実行レイヤー)

自然循環OS を動かす 4 つの実行レイヤー。観測(Observe)で循環の動態をデータに翻訳し、感覚(Immerse)で人間の感覚に翻訳し、再生(Regenerate)で現場の循環を取り戻し、編集(Edit)で古今東西の自然循環の事例を編集工学に基づき横断的にまとめる。その編集の実践媒体が 4 言語デジタルメディア Stillpoint です。四層は独立した工程ではなく、観測 → 感覚 → 再生 → 編集 → 観測…と往復しながら動く一続きの実践として設計されます。観測・感覚・再生が「いま・ここ」を扱うのに対し、編集は「古今東西」を扱い、四本柱を相互に厚くする役割を担います。

Foundation ── 横断概念

Foundation

自然循環(土・水・植物)

土の中で、水・空気・養分・微生物・植物の根が互いに関わり合いながら巡り続けている働きの全体、そしてそれが地上の樹勢・流域の水循環と一続きにつながった循環全体を指します。土・水・植物は別々の問題ではなく、一続きの循環として動いています。mitsulab が扱うすべての問題の根にある概念であり、自然循環OSはこの循環の機能不全を診断・回復するための実装プラットフォームです。

Foundation

TNFD・ネイチャーポジティブ(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)

TNFDは自然関連財務情報開示タスクフォース。気候関連のTCFDに続く形で、企業活動が自然資本に与える影響を定量的に開示する国際的フレームワークです。ネイチャーポジティブは2030年までに自然の損失を止め、回復軌道に乗せるという国際合意。これらは One Health の環境次元と地続きの政策的潮流であり、自然循環を「観測・感覚・再生・編集」の四本柱パッケージ(自然循環OS)で扱える実践者の必要性を高めています。

観測(Observe)── 観測・可視化技術

Observe

GIS(地理情報システム)

Geographic Information Systemの略。地図の上にさまざまな情報を重ねて見るためのデジタルツールです。標高・土壌種類・水の流れ・農地区画などを一枚の地図に重ね、植生や土中水分量の可視化、変化の追従、マクロ因子の観測・分析に活用します。

Observe

IoT(モノのインターネット)

Internet of Thingsの略。現場に設置した小さなセンサーが、継続的にデータを送り続ける仕組みです。土壌水分・温度・CO₂などを畑や斜面に設置し、各種センサーで継続的な観測。ミクロ因子の観測・分析を担います。

Observe

3DGS(3D Gaussian Splatting)

360度カメラ等で撮影した画像群から、異方性 3D ガウシアン(位置・共分散・球面調和関数色・不透明度)の集合体としてシーンを表現する微分可能ラスタライズ手法。Kerbl ら(SIGGRAPH 2023)が提唱し、フォトリアルな空間記録を従来比 100 分の 1 のコストで実現。Field X では、施工前・施工直後・3 ヶ月後・6 ヶ月後の差分を 3D 空間として比較し、時系列対応の 4D Gaussian Splatting 拡張も視野に入れます。

Observe

AI(人工知能)

大量のデータからパターンを読み取り、人間が気づきにくい変化や傾向を見つけ出す技術です。土壌データの解析・改善前後の比較・長期予測に活用。判断を任せるのではなく、現場の感覚と対話させるための道具として使います。

Observe

フィジカルAI(Physical AI)

デジタル空間の言語モデル(LLM)が言語空間で動くのに対し、物理世界の力学・空間構造を内在化した世界モデル(World Model)と連携し、センサーストリームから直接ポリシーを学習する AI。Vision-Language-Action(VLA)モデル、ロボット基盤モデル(NVIDIA Cosmos / Google RT-2 等)の系譜が代表例。畑や山・川の温度・湿度・土壌状態などを時空間データとして取り込み、状態予測・施工提案・最終的には現場介入までを一連で扱うことを志向します。mitsulab の観測・診断技術が将来統合していく中核概念の一つです。

Observe

環境DNA(eDNA)

水や土の中に存在する、生き物が残したごく微量のDNAの痕跡のこと。少量のサンプルを分析するだけで、その場所にどんな生物が暮らしているかを高精度に把握できます。mitsulab では、微生物から大型動物まで含めた生態系全体を非破壊で観測するための基盤技術として位置づけます。

Observe

サウンドスケープ(Soundscape)

カナダの作曲家マリー・シェーファーが提唱した概念で、ある場所を取り巻く音の景色のこと。鳥の声・風の音・水の流れ・人の営みまで含め、その土地の健康度や時間の層を音から読み取ろうとする考え方です。『Soil Sound Project』や現場の録音は、土壌循環の"音の診断"を可能にします。

Observe

ロボティクス(Robotics)

センサーやアクチュエーターで物理世界に働きかける機械の総称。mitsulab の観測体系においては、自動観測・土壌サンプリング・現場作業の省力化などを担う手足として位置づけます。フィジカルAIと組み合わさることで、現場と情報系が直接つながります。

再生(Regenerate)── 自然循環再生の実践知

Regenerate

土中環境

造園技術者・高田宏臣 氏が体系化した考え方で、土の中で起きている水・空気・微生物・根のやり取り全体を指します。健全な土中環境では木が元気に育ち、斜面も崩れにくくなります。mitsulabの実践はこの「見えない地下の健康」に焦点を当てます。

Regenerate

大地の再生

造園家・矢野智徳 氏が提唱・実践する、空気と水の流れを取り戻すことで土地を再生する技法です。点穴・水脈整備などを人の手で土地を読みながら進め、詰まった土に空気と水を通します。

Regenerate

有機土木

コンクリートや鋼材だけに頼らず、土・木・石・植物の力を活かして地形や水の流れを整える土木技術の考え方。石積み・木柵・植生による斜面保全など、江戸時代以前から続く知恵を現代の課題に応用します。

Regenerate

有機農業

化学肥料や合成農薬に頼らず、土壌中の微生物・腐植・団粒構造の働きを活かして作物を育てる農業の総称。「土を育てることが作物を育てること」という実践哲学に基づきます。

Regenerate

団粒構造

土の粒が小さな塊(団子)になり、その隙間に空気と水が通る状態のこと。健康な土は団粒構造をもち、根が伸びやすく微生物も活発。土壌改善の最も基本的な指標の一つです。

Regenerate

土壌微生物

土の中で無数に働く細菌・糸状菌・原生動物などの総称。有機物を分解して植物が使える養分に変え、団粒構造を作り、病原菌を抑える。土壌の健康度は、この微生物群集の多様性と活性で決まります。

Regenerate

菌根菌(Mycorrhizal Fungi)

植物の根と共生する特別なキノコ・カビの仲間で、根と菌糸を繋いで養分と水分をやり取りする微生物です。植物は光合成で得た糖を菌根菌に渡し、菌根菌は土の奥深くから燐やミネラルを運んできて植物に渡す——地球上の陸上植物の約8割が菌根菌と共生関係にあると言われ、土壌循環の中核をなす存在です。

Regenerate

菌糸(Mycelium)

糸状菌が伸ばす細い糸状のネットワーク。土中を縦横に張り巡らし、植物の根と共生(菌根菌)して養分を運び、土同士を繋ぎ止めて団粒構造の骨格を作ります。土壌の「情報と物質の高速道路」とも呼ばれます。

Regenerate

水・空気・物質循環

健全な土壌では、雨水が浸透し、空気が土中を通り、有機物が分解・再合成されて植物へ戻るという三つの循環が同時に動いています。このうち一つが詰まると全体が停滞し、斜面崩壊や農地の荒廃に繋がります。土壌改善の実践的な着眼点です。

感覚(Immerse)── 知覚拡張・体感の翻訳

Immerse

Qualia(クオリア)

哲学用語で、主観的に感じられる質感・感触のこと。赤色の「赤さ」、土を握ったときの「しっとり感」など、言葉や数値では完全に伝えきれない内的体験を指します。自然循環を扱う上で、機械の測定と補完関係にある人間の知の領域です。

Immerse

Qualia Practice(クオリア・プラクティス)

言葉や数値にならない、その人だけが感じている質感や感触(クオリア)を起点に、身体で感じ取るための創作実践です。墨による書や土を素材にした作品を通じて、データには還元できない「感じる力」を育てます。主な作品集として『Qualia/sound Ⅰ』『Qualia/sound Ⅱ』『Qualia/heart Ⅰ』があります。

Immerse

『Soil Sound Project』

ピエゾ素子(振動を電気信号に変換する素子)を土中に差し込み、土の中で起きている微かな音を聴くプロジェクトです。土壌生態系の活動が活発で豊かな土壌ほど多様な音が発生していることが分かっており、「Noisy soil」「Silent soil」といった聴覚領域での分類を通じて土壌循環を知覚化する試み。観測と感覚の橋渡し役を担います。

Immerse

Qualia Field(クオリア・フィールド)

mitsulab が展開するマルチモーダル没入体験プロジェクト。土中音・水中音をハイドロフォンでサンプリングし、音・触覚振動・体感温度へと翻訳するインスタレーション装置です。再生の前後の音を体感することで、自然循環の再生プロジェクトの持続的な社会実装を見据えます。

Immerse

『Modarity X』

環境要素=温度・湿度・光度・音の入力値を、触覚や音へと変換するIoTシステムとして制作された作品。ある場所の環境情報を別の感覚モードに翻訳し直すことで、普段は意識されない環境の質感を身体で感じ取るための装置となる。ハプティクスやサウンドスケープと近縁の知覚拡張プロジェクトです。

Immerse

マルチモーダル(Multimodal)

「モーダル(modal)」とは情報の種類のこと。文字・画像・音・振動・温度・位置など、異なる種類の情報を同時に扱う仕組みを指します。人間が視覚・聴覚・触覚を総合して土壌を判断するように、mitsulab の没入体験も複数のセンサー・映像・音による解析を一体で扱うマルチモーダル設計を前提とします。

Immerse

ハプティクス技術(Haptics)

振動や圧力・温度を使って、触覚に情報を届ける技術です。スマートフォンの振動も広義のハプティクス。Qualia Field では、土壌水分や団粒構造の違いといった本来目に見えない情報を、指先の感覚として触れるように変換することで、数値やグラフよりも直感的に土の状態を理解できる体験を目指します。

Immerse

xR(拡張・仮想・複合現実)

VR・AR・MRをまとめた呼び方。目に見えないものを体験できる形に変換する技術です。土の中の水や微生物の動きを立体的・視覚的に体験できるよう変換し、教育や現場研修に活用します。

Immerse

ミラーワールド(Mirror World)

現実世界の地形・建物・植生などを、デジタル空間上にそっくり再現した"もう一つの世界"のことです。Field X(3DGS空間記録)や GIS との組合わせで、対象エリアのミラーワールドを構築し、その上で実測データやシミュレーションを重ね、現場の過去・現在・未来を一望できるようにします。

Immerse

環世界(Umwelt)

生物学者ユクスキュルの概念で、それぞれの生き物が独自の感覚器で捉える"その生物ならではの世界"のこと。ミミズには土の世界が、菌糸には化学物質のネットワークが異なる姿で見えています。人間中心を相対化し、土壌生態系の多層性を捉える鍵となる視点です。

Immerse

知覚拡張(Perceptual Extension)

本来の人間の感覚スケールでは捉えられないものを、技術や作品を介して知覚できるようにする試み。顕微鏡が微生物を見せ、xRが土中の流れを体験させ、Qualia Practiceが身体を通じて不可視を感じさせる——これらすべてが知覚拡張の実践です。

編集(Edit)── 古今東西の自然循環の編集

Edit

編集レイヤー(Edit Layer)

自然循環OS の第 4 の柱。編集工学の考えに基づき、古今東西の自然循環の実践と知恵を横断的にまとめるレイヤーです。観測・感覚・再生が「いま・ここ」の自然循環を扱うのに対し、編集は「古今東西」の事例を編み、四本柱を相互に厚くします。その実践媒体が、4 言語デジタルメディア Stillpoint です。

Edit

編集工学(Editorial Engineering)

松岡正剛が体系化した、情報を集め・関係づけ・編み直すことで新たな意味を生み出す方法論。バラバラに見える知をつなぎ、文脈を組み替える編集の技法を指します。mitsulab はこの考え方を、古今東西の自然循環の実践と知恵を横断的にまとめる編集レイヤーの基盤に据えています。

Edit

Stillpoint(スティルポイント)

自然循環OS の第 4 の柱「編集」の実践媒体として運営される、4 言語(日・英・西・中)デジタルメディア。リジェネラティブ思想・東洋哲学・自然との共生を、古今東西の事例から比較文化人類学的に編集し、国際的に発信します。媒体名は T.S. エリオット「Burnt Norton」の "still point"(回転する世界の静止点)に由来します。

11 / Projects

関連プロジェクト

Related Projects — Networks, Practitioners & Organizations

mitsulab の実践は、世界各地で進む自然循環再生のプロジェクト群と地続きにあります。四本柱(Observe / Immerse / Regenerate / Edit)の各領域に関連する主要な実践者・組織・思想を整理しました。点ではなく面として、この運動の地図を描くために。

日本国内 ── 自然循環再生の実践者・組織

mitsulab が直接参考・連携する実践群。土中環境・大地の再生・自然農・サウンドスケープなど、日本独自の系譜が並ぶ。

Regenerate · 土壌

NPO 法人 地球守高田 宏臣 / 2009〜

造園技術者の高田氏が代表を務める NPO。著書『土中環境』で土中の水と空気の流れを理論化し、しがら・点穴・素掘り溝による現場改良を全国に広げる第一線の組織。chikyumori.org

Regenerate · 大地

大地の再生講座矢野 智徳 / 1990年代〜

造園家・矢野智徳が主宰する全国ネットワーク。「風の草刈り」「水脈整備」を軸に、土地の呼吸を取り戻す施工と講座を展開。映画『杜人』で知られ、地球守と並ぶ土中環境系の柱。daichisaisei.net

Foundation · 自然農

福岡 自然農法福岡 正信 / 1913–2008

わら一本の革命』で世界に影響を与えた自然農の祖。不耕起・無肥料・無農薬・無除草の「四無農法」と粘土団子による緑化運動は、現代のリジェネラティブ運動の原点として再評価が進む。f-masanobu.jp

Observe · 微生物

SOFIX 土壌診断久保 幹 / 立命館大学(提唱)/ 横山 和成(土壌微生物多様性活性値)

立命館大学の久保幹氏が提唱した SOFIX(Soil Fertile Index)は、土壌中の総細菌数・微生物バイオマス・窒素循環活性等を統合する土壌肥沃度評価法。並列して横山和成氏は土壌微生物多様性活性値という別系統の指標体系を確立。両者とも土壌の「生きている度合い」を数値化する系譜であり、mitsulab の Observe 領域における科学的指標化の重要な先行例。

Immerse · 音響

サウンドスケープ研究柳沢 英輔 / 同志社大学

フィールドレコーディングと音響人類学の研究者。著書『フィールド・レコーディング入門』『ベトナム中部高原ゴング文化』。土壌音・環境音を媒介にした知覚の拡張は Immerse 領域の理論的支柱。

Foundation · 構想

風の谷を創る安宅 和人 / 慶應義塾大学

『シン・ニホン』著者・安宅和人を中心とした「残すに値する未来」を構想する運動。都市集中ではなく疎な地域に、テクノロジーと自然が共存する集落を創る試み。mitsulab の地方拠点構想と思想的に近接。aworthytomorrow.org

Regenerate · 都市

Tokyo Urban Permacultureソーヤー 海 / 2011〜

都市部にパーマカルチャーを根付かせる活動家。『都会からはじまる新しい生き方のデザイン』。共生革命家として、コモンフォレストや非暴力コミュニケーションの実践を含む統合的アプローチを展開。tokyourbanpermaculture.com

Regenerate · 育苗

一般社団法人 土とゆりかご2020〜

在来種・固定種の種苗保全と、土から始まる育苗を実践する団体。生物多様性と食の自給を結び直す活動を進め、家庭から地域までスケーラブルな循環モデルを提示。

Foundation · 哲学

パーマカルチャー中部中島 正 ほか / 1990年代〜

都市を滅ぼせ』『みのり多き町』の中島正に代表される、日本のパーマカルチャー先駆世代。Bill Mollison の思想を日本の里山文脈に接続し、現代の自給運動の土壌を作った。

Regenerate · 樹勢

鎮守の森のプロジェクト公益財団法人 鎮守の森のプロジェクト / 宮脇昭式

植物生態学者・宮脇昭の潜在自然植生論に基づき、土地本来の樹種を密植して 10〜20 年で多層的な森林を再生する手法を全国・世界で展開。3.11 後の東北「いのちを守る森の防潮堤」など、樹勢回復と防災を同時に解く実践として知られる。morinoproject.com

Regenerate · 樹勢

明治神宮の森本多静六・本郷高徳・上原敬二 / 1920〜

1920 年に造林された「永遠の森」を目指す 100 年計画の人工自然林。林学者たちが極相林への遷移を予測して常緑広葉樹を中心に設計し、現在は遷移を経て本来の照葉樹林へ。長期視点での森林設計のモデルとして、世界の都市林学にも影響を与え続けている。meijijingu.or.jp

Regenerate · 水系

阿蘇グリーンストック公益財団法人 / 1995〜 (熊本)

世界最大級のカルデラ・阿蘇の千年続く草原(野焼き・採草・放牧の循環)と水循環を一体で保全する財団。野焼きによる草原維持が 100km² 規模の地下水涵養を支えていることを科学的に明らかにし、自治体・農家・市民・企業による広域連携の典型例。aso-greenstock.com

Foundation · 自然 × 技術

デジタルネイチャー落合 陽一 / 筑波大学・Pixie Dust Technologies

デジタルネイチャー』(2018) で提唱された、人間・自然・計算機が連続的に絡み合う世界観。物理現象と計算機リソースが分け隔てなく扱われる「計算機自然」として、現代のテクノロジーと自然の関係を問い直す。mitsulab の Observe × Immerse 領域における思想的な参照点yoichiochiai.com

Regenerate · 森林

一般社団法人 more trees坂本 龍一(発起人)/ 2007〜

音楽家・坂本龍一氏が発起人となり、「都市と森をつなぐ」をコンセプトに 2007 年設立。日本国内 12 カ所で多様な樹種による森づくりを進めるとともに、森林保全と地域経済の循環を結ぶ仕組みを設計。森林由来の CO₂ 吸収量を企業の脱炭素に接続するクレジット事業でも先駆。more-trees.org

Foundation · 保全

公益財団法人 日本自然保護協会NACS-J / 1951〜

日本最古の自然保護 NGO の一つ。赤谷プロジェクト(群馬・1万 ha 規模の生物多様性回復)や全国の里山保全モニタリング、政策提言を継続。長期スパンで自然を守る制度設計と現場実装を両立させる代表的団体。nacsj.or.jp

Foundation · 国際

WWF ジャパン公益財団法人 / 1971〜

世界 100 か国以上で活動する WWF(World Wide Fund for Nature)の日本支部。30by30・OECM・自然共生サイトの制度づくりと、企業のネイチャーポジティブ実装を国際基準で支える。Living Planet Index 等のグローバル指標を国内文脈に翻訳する役割。wwf.or.jp

Regenerate · 衣食

パタゴニア / Patagonia ProvisionsYvon Chouinard / 1973〜 (USA)

アウトドアアパレル発祥のグローバル企業ながら、創業者 Chouinard は「地球を株主に」と宣言し全株式を環境信託へ移管(2022)。Patagonia Provisions ではリジェネラティブ・オーガニック農法による食品生産を推進し、衣食住すべてを再生型に転換するモデルを提示する象徴的存在。patagonia.jp

世界 ── 自然循環再生のグローバル組織・運動

気候・生物多様性・土壌・政策の最前線。mitsulab が国際的に位置づけるべき参照点。

Regenerate · 放牧

The Savory InstituteAllan Savory / 2009〜 (USA)

ジンバブエ生まれの生物学者 Allan Savory が提唱するホリスティック・プランド・グレイジング(全管理放牧)の世界本部。砂漠化した草原を家畜の群れで再生する手法で、世界 50 か国以上にハブを展開。savory.global

Policy · 認証

Regenerative Organic Alliance2017〜 (USA)

Rodale Institute・Patagonia・Dr. Bronner's らが設立したRegenerative Organic Certified(ROC)認証団体。土壌健康・動物福祉・社会的公正の三軸を統合する世界基準を策定。regenorganic.org

Observe · 研究

Rodale Institute1947〜 (USA)

米国・有機農業研究の総本山。40 年以上の Farming Systems Trialで有機農法と慣行農法の科学的比較を継続し、リジェネラティブ農業のエビデンスベースを築いてきた。rodaleinstitute.org

Regenerate · 砂漠化

The Great Green Wallアフリカ連合 / 2007〜

サヘル地域を東西 8000km にわたり緑化するアフリカ大陸規模の砂漠化対策プロジェクト。21 か国が参加し、土地再生・雇用創出・気候適応を統合する世紀のスケール実験。greatgreenwall.org

Policy · 土壌炭素

4 per 1000 Initiativeフランス政府 / 2015〜

COP21 で発表された国際イニシアチブ。土壌有機炭素を年 0.4% 増やせば大気 CO₂ 増加を相殺できるという仮説に基づき、世界の農地土壌を炭素貯留装置として再定義する政策枠組み。4p1000.org

Foundation · 教育

Permaculture Research InstituteGeoff Lawton / 1997〜 (AUS)

Bill Mollison の弟子 Geoff Lawton が運営するパーマカルチャー教育の世界拠点。ヨルダンの「砂漠を緑に変えた」プロジェクトで知られ、PDC(Permaculture Design Course)の世界標準を担う。permaculturenews.org

Regenerate · 景観

Commonland2013〜 (オランダ)

「4 Returns」フレームワーク(インスピレーション・社会・自然・財務)で大規模景観再生を投資可能にした財団。スペイン・南アフリカ・オーストラリアなどで 100 万 ha 規模の再生を進める先進事例。commonland.com

Immerse · 映像

Green Gold / John D. LiuEcosystem Restoration Camps

映像作家・生態系再生家。中国・黄土高原の大規模再生を記録した『Green Gold』で世界に衝撃を与え、現在は Ecosystem Restoration Camps を世界各地で運営。映像と現場をつなぐ実践者の象徴。ecosystemrestorationcommunities.org

これらは固定的なリストではなく、随時アップデートされる生きた地図です。連携可能な実践者・組織を継続的に追記していきます。

12 / Papers

関連論文

Papers — Key References across Soil, Climate, Biodiversity, Sound

mitsulab の四本柱と社会的背景を支える主要な学術論文・国際レポートを集約しました。各分野の決定的な参照点として、引用+概要+公式リンクで整理しています。

地球システム ── 惑星限界と人類の影響Earth System — Planetary Boundaries & Human Impact

Rockström, J. et al. (2009)

"Planetary boundaries: Exploring the safe operating space for humanity"

Ecology and Society 14(2): 32

人類が安全に活動できる地球システムの「9 つの境界」を初めて定義した記念碑的論文。気候変動・生物多様性・土地利用変化・生物地球化学的循環・淡水・海洋酸性化・オゾン層・エアロゾル・新規物質の各境界を超えると、地球が新たな状態へ不可逆に移行する可能性を示した。 DOI

Richardson, K. et al. (2023)

"Earth beyond six of nine planetary boundaries"

Science Advances 9, eadh2458

プラネタリーバウンダリー枠組みの 2023 年更新版。9 つの境界のうち、気候変動・生物圏完全性・土地利用変化・生物地球化学的循環(窒素・リン)・淡水循環・新規物質の6 つで安全域を超過していることを定量的に示した。地球システムの安定が複数の方向から崩れていることを実証した最新の総合評価。 DOI

IPBES (2019)

Global Assessment Report on Biodiversity and Ecosystem Services

IPBES Secretariat, Bonn

生物多様性版 IPCC とも呼ばれる IPBES による初の全球評価。約 100 万種が絶滅の危機にあり、自然の劣化速度は人類史上前例のないレベルであると結論づけた。土地利用変化・直接利用・気候変動・汚染・侵略的外来種を 5 大要因として整理。 ipbes.net

Díaz, S. et al. (2019)

"Pervasive human-driven decline of life on Earth points to the need for transformative change"

Science 366, eaax3100

IPBES Global Assessment の中核成果を Science 誌に凝縮した論文。生物多様性の喪失が局所的でも一時的でもなく、地球規模で全方位的に進行していることを示し、技術的解決ではなく経済・社会・統治構造そのものの「変革的変化(transformative change)」が必要だと主張。 DOI

WWF & ZSL (2024)

Living Planet Report 2024

WWF International, Gland

監視対象となる脊椎動物 5,495 種・約 35,000 個体群のデータに基づく Living Planet Index は、1970 年から 2020 年の間に平均 73% の減少を示した。淡水生態系での減少(85%)が最も深刻。地球システムが転換点に近づいていることを警告し、自然・気候・食料システムの統合的変革を呼びかけている。 livingplanet.panda.org

土壌・土地科学 ── 劣化と再生のサイエンスSoil & Land Science — Degradation & Regeneration

FAO & ITPS (2015)

Status of the World's Soil Resources (SWSR) — Main Report

FAO, Rome

国連食糧農業機関と政府間土壌技術パネルによる、世界初の包括的土壌資源評価。世界の土壌の約 33% がすでに劣化しており、土壌侵食・有機物減少・塩類集積・栄養素枯渇・生物多様性喪失・圧密などが主要脅威であると整理。土壌は「再生可能だが極めて再生が遅い」資源であることを警告した。 fao.org

Lal, R. (2004)

"Soil carbon sequestration impacts on global climate change and food security"

Science 304: 1623–1627

土壌が気候変動緩和の鍵を握ることを科学的に示した古典的論文。劣化した世界の農地土壌に有機物を戻すことで、大気中 CO₂ の相当量を土壌に再固定できる可能性を定量化。土壌炭素貯留が気候・食料安全保障・土地劣化対策の三方を同時に解く戦略であることを示した。 DOI

Bardgett, R.D. & van der Putten, W.H. (2014)

"Belowground biodiversity and ecosystem functioning"

Nature 515: 505–511

地下の生物多様性 ── 細菌・菌類・原生生物・線虫・ミミズ等 ── が、地上の生態系機能(栄養循環・植物生産・気候調整)を支配的に駆動していることをレビューした影響力の大きい論文。土壌生物群集の変化が地上生態系全体の挙動を変えるメカニズムを整理し、土壌を「もう一つの生物多様性のフロンティア」と位置づけた。 DOI

Wall, D.H., Nielsen, U.N. & Six, J. (2015)

"Soil biodiversity and human health"

Nature 528: 69–76

土壌生物多様性が、食料生産・水質浄化・病原体抑制・薬剤資源・気候調節を通じて、人間の健康そのものを支えていることを総説。土壌の劣化は単なる農業問題ではなく公衆衛生の問題であり、生態系・人間・地球システムを同じ座標で扱う必要があることを示した。 DOI

Montgomery, D.R. (2007)

"Soil erosion and agricultural sustainability"

PNAS 104(33): 13268–13272

農地土壌侵食が長期的な持続可能性に与える影響を地形学・歴史学的視点から定量評価。慣行農法の侵食速度は土壌生成速度の 10–100 倍であり、不耕起・有機・カバークロップが鍵となることを示した。文明史と土壌科学を接続する代表的論文。 DOI

Banwart, S.A. et al. (2019)

"Soil functions: Connecting Earth's critical zone"

Advances in Agronomy 142: xx–xxiii

土壌を「地球のクリティカルゾーン」(地表から地下水までの相互作用領域)の中心装置として位置づけ、農業・水循環・気候・生物多様性・人間健康をすべて結ぶ機能ハブであることを総説。土壌科学を分野横断的に統合した影響力の大きいフレーム提示で、自然循環再生事業の科学的位置づけに直接接続する。 DOI

Suding, K.N. (2011)

"Toward an era of restoration in ecology: Successes, failures, and opportunities ahead"

Annual Review of Ecology, Evolution, and Systematics 42: 465–487

生態系再生の時代が本格化する中で、世界各地の再生プロジェクトの成功・失敗事例を統合分析した記念碑的レビュー。再生は「元の状態への復元」ではなく「新しい力学的均衡へのナビゲーション」であることを示し、自然循環再生事業の概念的基盤の一つに。Resilience-based ecological restoration の主要文献。 DOI

サウンドスケープ・観測Soundscape Ecology & Sensing

Krause, B. (2008)

"Anatomy of the Soundscape: Evolving Perspectives"

Journal of the Audio Engineering Society 56(1/2): 73–80

Bernie Krause による生物音響学の枠組み。Geophony・Biophony・Anthrophonyの三層分類で、生態系の健康を音で診断するアプローチを確立。サウンドスケープを科学的観測対象として位置づけた。 AES

Pijanowski, B.C. et al. (2011)

"Soundscape Ecology: The Science of Sound in the Landscape"

BioScience 61(3): 203–216

Soundscape Ecology という新領域を確立した論文。風景の中の音を、生物・環境・人間活動の相互作用を読み取る信号として体系化し、現代のフィールドレコーディング研究の礎となった。 DOI

Krause, B. & Farina, A. (2016)

"Using ecoacoustic methods to survey the impacts of climate change on biodiversity"

Biological Conservation 195: 245–254

音響生態学(ecoacoustics)の手法を用いて、気候変動が生物多様性に与える影響を非侵襲的にモニタリングする方法論を整理。Soundscape を生態系の健康指標として位置づけた。 DOI

観測技術・データ基盤Observation Tech & Data Infrastructure

Kerbl, B. et al. (2023)

"3D Gaussian Splatting for Real-Time Radiance Field Rendering"

ACM Transactions on Graphics 42(4): 139

スマートフォンや 360 度カメラの画像群から、異方性 3D ガウシアンの集合体としてシーンをフォトリアルに再構築する微分可能ラスタライズ手法を提示した記念碑的論文。NeRF と比べて学習・レンダリングともに桁違いに高速で、森林・現場 3D 記録のコストを 100 分の 1 に下げた。Field X など mitsulab の空間観測パイプラインの基盤技術。 DOI

Taberlet, P. et al. (2018)

Environmental DNA: For Biodiversity Research and Monitoring

Oxford University Press

環境 DNA(eDNA)メタバーコーディングの体系的教科書。水・土壌・空気の微量サンプルから、16S rRNA・ITS・COI 領域の amplicon シーケンシングで生物相全体を非破壊で把握する手法論を確立した。流域・森林の生物多様性観測の標準を一新し、希少種・微生物群集・捕獲困難種までモニタリング可能になった。 OUP

Tedersoo, L. et al. (2014)

"Global diversity and geography of soil fungi"

Science 346, 1256688

全球 365 地点の土壌真菌メタゲノミクスにより、真菌多様性のグローバルパターンを初めて記述した記念碑的研究。緯度勾配・気候変数・植生との相関を統計モデルで明示し、土壌微生物相の地理的決定要因を確立。SOFIX や地形 × 微生物相分析(mitsulab GitHub の PoC リポジトリと整合)の上位参照。 DOI

Stowell, D. (2022)

"Computational bioacoustics with deep learning: a review and roadmap"

PeerJ 10:e13152

深層学習による生物音響解析の包括的レビュー。低価格パッシブ録音機(AudioMoth 等)と AI 解析パイプラインを組み合わせた長期音響モニタリングが、生態系の健全度評価の中心技術になりつつあることを示した。Soil Sound Project の理論的枠組み。 DOI

Reichstein, M. et al. (2019)

"Deep learning and process understanding for data-driven Earth system science"

Nature 566: 195–204

物理過程の知識と深層学習を融合させる「ハイブリッドモデリング」の枠組みを提示。地球システム科学に AI を導入する際の方法論的基盤を整理し、観測 → モデル化 → 予測のサイクルをデータ駆動で更新する道筋を示した。「自然循環 OS」のフィジカル AI 統合の理論的バックボーン。 DOI

これらの論文は固定的なリストではなく、随時更新されます。各分野の関連実践者・組織は 関連プロジェクト タブを参照してください。

13 / Thought

関連思想

Thought — Concepts that frame our understanding

「自然」「生命」「主体」を問い直す現代思想の系譜。mitsulab の四本柱(特に Immerse / Foundation 領域)を支える哲学的・人類学的・生物学的な思考の地図。先行する論文(関連論文)と、現場で動く実践者・組織(関連プロジェクト)の中間に位置する、ゆるやかな思想の網です。

思想・概念 ── 自然循環を考えるための鍵となる人物

「自然」「生命」「主体」を問い直す現代思想の系譜。Immerse / Foundation 領域の哲学的支柱。

Foundation · 哲学

Timothy Mortonティモシー・モートン / Rice Univ.

自然なきエコロジー』『ハイパーオブジェクト』。「Nature」概念そのものを脱構築し、人間と非人間が絡み合う「メッシュ」としての世界を提示。気候危機時代の存在論を更新する思想家。

Foundation · 社会学

Bruno Latourブリュノ・ラトゥール / 1947–2022

地球に降り立つ』『虚構の「近代」』。アクター・ネットワーク理論(ANT)で人間と非人間(土・微生物・ガイア)を対等なアクターとして扱う方法論を確立。自然と社会の二分法を解体した。

Foundation · 人類学

Donna Harawayダナ・ハラウェイ / UC Santa Cruz

伴侶種宣言』『Staying with the Trouble』。「Chthulucene」という概念で絡まり合う種同士の親族関係を提唱。人類中心主義を超えた multispecies thinking の起点。

Foundation · 生物学

E. O. Wilsonエドワード・O・ウィルソン / 1929–2021

バイオフィリア』『生命の多様性』。biodiversity という言葉を世に広めた進化生物学の巨匠。「Half-Earth」構想で生物多様性保全の最大規模のビジョンを提示した。

Observe · 森林

Suzanne Simardスザンヌ・シマード / UBC

マザーツリー』。森林の菌根菌ネットワーク(Wood Wide Web)を通じた樹木間のシグナル伝達を実証。森を個体の集合ではなく「ひとつの社会」として捉える視点を科学的に確立した。

Foundation · 先住知

Robin Wall Kimmererロビン・ウォール・キマラー

植物と叡智の守り人』(Braiding Sweetgrass)。植物学者でありポタワトミ族の継承者。科学知と先住民の伝統知を編み合わせ、互酬性(reciprocity)の倫理を世界に広めた。

Immerse · 知覚

Jakob von Uexküllヤコブ・フォン・ユクスキュル / 1864–1944

生物から見た世界』。各生物が独自に知覚する主観的世界=「環世界(Umwelt)」の概念を提唱。ハイデガー・ドゥルーズ・現代の multispecies 論にまで連なる、知覚論の原点。

Foundation · 土壌

David R. Montgomeryデイビッド・モントゴメリー / Univ. of Washington

土の文明史』『土・牛・微生物』。地形学者として文明と土壌劣化の歴史を描き出し、再生農業を「土を取り戻すことが文明を救う」という枠組みで提示した第一人者。

Foundation · 倫理

Aldo Leopoldアルド・レオポルド / 1887–1948

野生のうたが聞こえる(A Sand County Almanac)』。米国の保全生物学・環境倫理の創始者。「土地倫理(Land Ethic)」—— 人間を土地・水・植物・動物のコミュニティの一員として位置づける思想 —— を確立し、近代的な再生・保全運動の倫理的基盤を提示した。

Foundation · 共生

Lynn Margulisリン・マーギュリス / 1938–2011

共生生命体の30億年(Symbiotic Planet)』。細胞内共生説(Endosymbiosis)を確立し、進化が競争のみならず共生・融合によって駆動されることを示した進化生物学者。Holobiont(複数生物が一体として機能する単位)概念の源泉として、自然循環の関係性的世界観を支える思想的支柱。